2021/10/03(Sun)
○[写真] Nikon COOLSCAN V ED(LS-50) + ストリップフィルムアダプタ(SA-21) + Vuescanでハーフフレームなフィルムをスキャンする
久しぶりにやろうとしてすっかり忘れてたので、表題の環境でハーフフレームなフィルムを2コマ同時ではなく1コマずつ取り込むための設定方法をチラシの裏にメモしておく。
まず最初にするべきことは
- 「環境設定」タブにて「切り抜き単位」と「印刷単位」をデフォルトの「mm」(ミリメートル)から「pixel」(ピクセル)に変更
- 「入力」タブにて「フレーム間隔」を「0」すなわち最大フレーム長の5959ピクセルから、その半分の「2980」に変更
- 「切り抜き」タブにて「プレビューエリア」を「マニュアル」に変更し、プレビュー:yサイズを同じく「2980」にセット
でOK。
あとは有効イメージサイズ(23mm×17mm)内で切り抜く設定だけども
- 「切り抜き」タブにて「切り抜きサイズ」を「マニュアル」に変更し、Xサイズを「3622」Yサイズを「2677」にセットし、「自動オフセット」にチェックを入れる
- 「複数の概要を表示」にチェックが入ってる場合、誤動作することがあるので外しておく(そもそもストリップフィルムアダプタには不要な機能)
でおしまい、基本はこれだけでいい *1。
ただしJPEG/TIFFだけでなくアーカイブのためにRAW形式でも保存したい場合、切り抜きサイズはRAWファイルにも影響してしまうことに注意。 せっかくRAWファイル保存したのに後からは切り抜きのやり直しができず、またしても物理フィルムからの再スキャンが必要になってしまう。 これではRAWの価値が無いので「切り抜きサイズ」は「マニュアル」でなく「最大」を選択して未露光エリアも残しておいた方がいい。
なおフィルムスキャン時にJPEG/TIFF出力とRAW出力は同時にできるけれど、未露光エリアが残ってしまう上に更にはカラーバランスにも影響を与えてしまう。 後者についてはマニュアル読むと「切り抜き」タブの「しきい値(%)」あるいは「バッファ(%)」の設定によって回避できるとあるのだが、ワイの経験上あまりいい結果にならんのでこいつには頼らない方がいい。
ということで
- 「環境設定」タブで「ディスク由来のRAWを有効にする」をチェック
- 物理フィルムからは未露光エリアを残したRAWファイルのみスキャンする
- 「入力」タブで「ソース」をスキャナから「File」に変更し、「ファイル」にさっき保存したRAWファイルを指定する
- 有効イメージサイズ(23mm×17mm)内で切り抜く設定をし、RAWファイルからJPEG/TIFFスキャンを行う
と2段階踏んでスキャンしろってこった、うーんクソめんどくせえ…このへん設定で「RAWファイルは切り抜かない」みたいなのがあればいいのになと思うんだけど。
このNikon COOLSCANシリーズのストリップフィルムアダプタ(SA-21など)だけど、以前のストリップフィルムホルダー(FH-2など)とは違い複数コマの連続スキャンが可能なので作業時間の大幅な短縮に繋がる。 まともなフィルムスキャナとしては唯一の現行製品であるPlustek OpticFilm 8200i Aiはこの手の機能が無いので、いまだに中古で人気の機種なのもこのあたりが理由。 大量にあるフィルムのデジタルアーカイブ化に、1コマスキャンする度にストリップフィルムホルダー抜き差ししてコマ移動なんかやっとれんからね。
ところがですね、このストリップフィルムアダプタまわりに関するVuescanの実装は実用に耐えないレベルということも覚えておいてほしい。 もし今から中古買おうとしてる人がいたら、ワイみたいな安物買いの銭失いを避けてSilverfast買うことをお勧めする。 まぁSilverfastも作者がドイツ人というとこで察しろなのだが、操作性が非人間的で壊滅的にややこしいからこっちもかなり苦痛なので、試用版で自分はこのツールを使いこなせると確信してから買ってくださいなのだけど。
どのへんがオワットルのかいうとVuescanはフィルムのコマ間調節の実装がオワットルのだ、作業時間の大幅な短縮どころか余計な手間で時間が吸い取られていくのである。
まず手動巻き上げのカメラで撮影した場合当然だけどフィルムのコマ間は大きくバラつくのはご存じの通り、自動巻き上げのカメラならほぼ一定間隔になるけど。
なので純正ソフトのNikon Scanなんかはその対策として、すべてのコマ開始位置を特定する作業を行うために一旦ストリップフィルム全体のプリスキャンを実行し、それによって得られた位置を元にコマ送りを行う。
ところがVuescanはここらへんクッソ手抜きなのだ、プリスキャンでは自動露出と先頭フレームの開始位置の特定だけしかせず、あとはひたすらさっきのフレーム間隔(デフォルトでは0すなわち5959ピクセル)で次のコマが現れると仮定しているだけの超やっつけ実装なのだ、当然コマ送る毎にズレズレズレズレで実用に耐えんのよね。 しかもハーフフレームだとこのズレ幅の影響は倍になるから始末が悪い。
最悪のケースだと36枚撮りで36+α回、ハーフフレームだとその倍の72コマ+α回もこのフレーム間隔のズレを調整する作業が発生するわけ。 下手するとフィルム一本取り込むだけで数時間かかる作業となってしまう、もうマジ窓から投げ捨てろリスト入りである。
やはりWIA(Windows Image Acquisition)まわり勉強して自分でスキャンツール書くしかねえと壁の人の顔の形をしたシミが叫んでいるのだけれども、それに費やす時間を考えたらSilverfast買った方がマシだし、とはいえ貧乏人なので以下略、うーんどうするかなぁ。
自分で書くのであれば、 以前の記事のパーフォレーションの欠損対策なんかも実装したいのだけれど、まぁワイの人生残された時間でこんなんやる熱意はもうどこにも残っていないのである。 高橋幸宏の「空気吸うだけ」という歌の気分だからな。
○[漫画] 久米田康治/かくしごと(その3)
ということで 前回の続き。
@鎌倉の家の本当の所在地
アニメでは姫は七里ガ浜駅で下車し、そこから鎌倉学園前駅方向へ少し歩いたところにある階段を登った先に鎌倉の家があるという描写になっとるのだけど、実はこれ漫画1巻の時点だと場所違うんだよね。そもそもこの階段って国道134号には面しておらず1本裏道になってるので民家にさえぎられて海はまともに見えないはずなんだよな。
これ漫画の方を改めて確認すると
- 1巻冒頭カラー、姫は七里ガ浜駅で下車した描写は無い、次のコマで有名な鎌倉高校前駅の踏切を通過している
- 2巻巻末カラー、鎌倉の家の下にみえる駅ホームは海に面しているのであきらかに七里ガ浜駅ではなく鎌倉高校前駅
ということがわかる、つまり鎌倉高校前駅の腰越駅側の改札を出て墓地の脇をぬけ聖テレジア病院付属の老人ホームに向かう階段が正しいのだ。
ただしここも前回の踏切と同様に漫画の嘘があって
- 2巻巻末カラー、姫を心配して後を追ってきた少女4人
- 5巻本編、少女と犬の絵をしまいに鎌倉を訪れた可久士
- 12巻本編、姫らが原稿を取りに向かくシーン
あたりだと明確にアニメと同じ七里ガ浜駅裏の階段の方だし、そもそも鎌倉の家のモデルと思われる平屋の民家もこっちの七里ガ浜駅裏の方に存在するんだよね。
ということで前回の踏切と同様に階段もキメラなのだ、当初は鎌倉高校前の階段がモデルだったけれども、後から七里ガ浜の階段要素を混ぜたわけ。
ではなぜ当初は鎌倉高校前駅の裏だったのかという謎解きだけどこれもやはり踏切の謎と同じ。 太宰治が心中に失敗し療養生活を送った中村恵風園療養所や聖テレジア病院といった昭和期に結核患者のサナトリウムだった場所がすぐ隣というロケーションだからだろう。
ちなみにアニメのOP(「舞い上がれ」のとこ)では前回ちょこっと触れた葛飾北斎の富嶽三十六景「相州七里ガ浜」の視点、つまり踏切=中村恵楓園療養所からの小動岬と腰越港そして江ノ島(ただし富士山は夏なので見えない)の風景なんだよなこれ。
前回も書いた通り、太宰はこの療養生活を元に「道化の華」などの作品を書き上げるのだけど、本編においても可久士が事故で記憶喪失となり病院で療養生活を送る中で
打ち切りくらった円満終了したはずの漫画の続きを書きはじめるシーンがある。
ちなみにこのシーン、過去作品の「かってに改蔵」最終巻に収録されたおまけ漫画「大蛇足」のセルフオマージュでもあるのだ。 「かってに改蔵」を打ち切られ小学館を追い出され無職となった久米田先生が精神病院の閉鎖病棟のベッドの上で誰にも読まれることのない続きを書いているという自虐ネタ。
@もう一人の文豪
5巻巻頭カラーで羅砂と十丸院が休憩する喫茶店、これは逗子マリーナにあるロンハーマンカフェがモデルなのだけど、ここいらへんも実は文豪ゆかりの地なんだよね。
アニメだとはっきり建物も描かれてたのだけど、ここの逗子マリーナ本館は川端康成(劇中に登場する「伊豆のバジリコ」を書いた文豪七夕康成のモデル *1)がガス自殺(諸説あり)を図って亡くなった場所なんだよね。
この逗子マリーナの一室は仕事場として購入したもので、川端の本宅は鎌倉の長谷にある。そこから歩いて数分の長谷寺は紫陽花の咲きみだれる長い階段で有名だけども、これ 11巻表紙になってるんだよね。
(追記) 同じ紫陽花階段でも長谷駅の長谷寺ではなく極楽寺駅の成就院の方であった、前者の階段からは山門見えないし海の見える方向が違うのに気づいた。
他にも 10巻表紙になってる秋谷海岸の立石公園の駐車場入口
ここは泉鏡花の怪奇物「草迷宮」の舞台だなそういえば。 そしてここからみる富士山は、歌川広重の冨士三十六景「相州三浦の海上」だね、 ワイもよくこの辺ウロウロして写真撮ってます。 レストランDON秋谷店で行くたびに海の幸スパを頼んで「思ってたのと違う…」と途方に暮れてる記憶障害のオッサンがいたらそいつです。
@次回
鎌倉にまつわる二人の文豪についての謎解きの総仕上げ、「鎌倉病」の本当の意味について書く予定、いつになるかは知らん。