2021/09/21(Tue)
○[漫画] 久米田康治/かくしごと(その2)
前回の続き、まぁ書きたいことはいっぱいあるのだが今回もうまくまとまらないので散文的に。
@江ノ電先頭車両の車中からみた信号と踏切の脇に立つ可久士と姫
そういやパンフ劇場で売り切れてたので通販で申し込んだの届いてたわ。
映画のキービジュアルとなったこのイラストなんだけどここには漫画の嘘があって、江ノ電と国道134号線が並走する腰越駅-鎌倉高校前駅間に3つばかり存在する踏切のうち2つのキメラになってる。
まず踏切の幅員、遮断機の向き、そして七里ガ浜のえがくなだらかなカーブから判断するとここは1つ目の踏切からの視点だ。
しかしイラストに存在する海岸へ出る横断歩道なのだがこの踏切には実在しない、不思議なことになぜかここだけ2つ目の踏切からの視点なのよね。
つまりは久米田先生的には2つ目の踏切が描きたかったのだけど、景観的には1つ目の方が絵として映えるから妥協してキメラにしたんじゃないかなという推測ができる。 ではなぜキメラにしてまで2つ目の踏切要素を加えたかったのかその理由の謎解きをしてみよう。
実はこの2つ目の踏切ってば鎌倉海岸キリスト教会の出入り口なんだけど、つい数年前まで隣に恵風園胃腸病院という施設が存在しそっちの出入りがメインだったのよね。 この名前をきいて全国100万人の太宰治オタならピンと来ただろうけど、この病院こそ太宰が鎌倉で心中を図り死に切れずにいるところを発見され担ぎ込まれた病院なんだよね。 この時の体験を元に太宰は「道化の華」を書いたのだけど、主人公の大庭葉蔵(のちに「人間失格」にも登場する)が療養生活を送る青松園はこの病院がモデル *1。
そんでこの事件で助からなかった心中相手の田部あつみだけど、彼女は満18歳まであと4日という若さだった。姫18歳編という年齢のピックアップはこれが元ネタなんじゃないのかなという気がする。
なお映画では監督の発案でアニメから映画化までの1年をそのまま姫にもあてはめて19歳に成長させたんだけど、元ネタがあるからこそ久米田先生は意図的にキービジュアルでも特典の描き下ろし漫画でもそして円盤の描き下ろしカバーでも変わらず18歳のセーラー服のままにしてるんじゃないのかなという気がする、公式には連絡ミス(棒)だそうだけどな!
ちなみに太宰自身が田部あつみでなく自分が死に彼女の方が生き残って19歳を迎えていたらなんてIFを書いた「火の鳥」という独りよがりで趣味の悪い作品を途中まで書きかけて投げ出していたりする闇。