The Man Who Fell From The Wrong Side Of The Sky:2016年1月18日分

2016/1/18(Mon)

[音楽] そして星は再び蘇る (その2)

昨日の続きです。

@ 月旅行時代という白昼夢 (Moonage Daydream)

タイトルは1972年、もう月面からのテレビ中継も新鮮味がなく飽きられた頃にリリースされたアルバム The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Marsからです。

この曲は The Spiders From Marsの前身の Arnold Cornsによって録音されたバージョンがあり、アルバムのコンセプトが固まっていなかったのか歌詞が一部異なります。しかしサビはどちらのバージョンも

痺れるような君の視線で僕をずっと見ていて欲しい
光線銃を僕の頭に突きつけて
君の美しい顔を僕に押しつけてキスしてくれないか、愛しい人よ
気狂ってしまおう、月旅行時代という白昼夢の中で

月面に人類が大いなる一歩を記した宇宙開拓時代の狂騒と LSDによる幻覚の真っただ中で愛し合う男女 *1の事を歌っています。

しかし同年12月に打ち上げられた17号を最後にアポロ計画は打ち切られ、月は再び人類の立ち入らぬ地となりました。 そしてLSDもイギリスでは前年に制定された 薬物乱用法により衰退していくこととなります。

まるでどちらも白昼夢であったかのように、果たしてこれらの狂乱の時代は何だったのでしょうか?

@ 容易ならざること (It Ain't Easy)

それは余りにも不可能と思える挑戦でした、タイトルはやはりアルバム Ziggy〜 から。

容易ならざること
容易ならざること
そんな簡単な事じゃない、落ち込んでいるようじゃ天国へはたどり着けない

今を遡ることおよそ半世紀ほどの昔、ライス大学において ジョン・F・ケネディ大統領は有名な演説を行いました、1962年の事です。

アメリカは月に行くことを選択します
アメリカは月に行くため、これからの10年であらゆることを実現するという決断をします
それは決して容易だからではなく、何よりも困難であるからです

しかしこの時アメリカの持つロケット技術は ヴァンガードレッドストーン、そして ジュノーIIといった「運が良ければ飛び大抵は爆発する」という信頼性の著しく劣悪なロケットが全てでした。

なぜこのような無謀とも思える政策、しかも10年のタイムラインを切ってまで強硬したのでしょうか?

@ 風が吹くとき (When The Wind Blows)

タイトルは核戦争の後に訪れる「核の冬」を題材にした、映画 When the Wind Blowsの同名主題歌より。

さらば息子よ、恐ろしい闇がやってくる
もう二度と太陽の光を見ることはないだろう
僕はその時のことを考えるのがとても恐ろしい
あの風が吹く時の事を
あの爆風が全てを吹き飛ばす時の事を

1957年にソ連は史上初の人工衛星である スプートニク1号の打ち上げに成功し、アメリカは スプートニク・ショックと後に呼ばれるパニック状態となります。

ロケット技術の優位性すなわち大陸間弾道ミサイルの優位性です、スプートニク1号を打ち上げた R-7ロケットに水爆を搭載しすることで、ソ連はいつでもアメリカを奇襲核攻撃できると信じられるようになったわけです *2

その危機感( ミサイル・ギャップ)から、これまで陸海空軍がバラバラで進めていた宇宙開発を新たに設立した NASAの元に一元化し、ソ連に先駆けて有人宇宙飛行を実現すべく マーキュリー・セブンと呼ばれることになる7人の宇宙飛行士を選出します。

しかし演説の前年、ソ連はまたもや ボストーク1号により史上初の有人宇宙飛行を成功させ、アメリカとの宇宙開発競争に勝利します。

何度となくソ連に後塵を拝したアメリカが狙う逆転の一打が、月への一番乗りを果たすということです。 その意思表明がこのケネディ大統領による「アメリカ人を世界に先駆けて月に立たせる」という演説だったのです。

@ 次回予告

月へのレース、いよいよトム大佐のモデルとなった宇宙飛行士たちの話になります。

次回「 英雄に求められる資質 (The Right Stuff)

*1:The Spiders From Marsバージョンでは男同士ともとれる歌詞ですが、Arnold Cornsバージョンでは男女です。
*2:実際にR-7ロケットにはアメリカ本土を核攻撃できるほどの能力はなく、ヨーロッパに中距離弾道ミサイルと戦略爆撃機を配備する西側が未だ有利でしたが、アメリカはその事実を知る由もありません。