The Man Who Fell From The Wrong Side Of The Sky:2016年1月分

2016/1/10(Sun)

[ThinkPad][宗教][Windows] 最近

@ 前兆

去年の終わりくらいからずーとThinkPad X220のファンが寿命のようでブーンwwwwブンシャカwwwと異音を発してたのですが、ついに s/異音/イデオン/ したようでファンエラーで起動しなくなってしまいました。

部品は以前から取り寄せてあったのでバラして交換するだけなんですが、作業がめんどくさかったので *1キーボードだけ外してブロアでふーふーしただけで使ってたんすよね。 時々ファンがフラフラと止まってCPU温度が100度に上昇してサーマルエラーで強制シャットダウン寸前にもなってるのにねぇ。

もう購入して3年も経つし満身創痍ですがな、本当なら新しいの買うべきなんだろうなぁそんなお金はありませんが。

  • CPU/GPU冷却ファン異音
  • 液晶トップパネルのクラッシャブルゾーン割れ
  • パームレストのExpesscardスロット周辺に割れ
  • キーボードのヘタリ

こんなボロボロの状態のをだましだまし使ってたんですが…

@ 発動

ダメだった、発熱はやっぱヤバいすねちょっと負荷の高い処理させてる最中に突然シャットダウン、慌てて冷やしてみたもののシステムドライブにしてたmSATA SSD 256GBが正月早々死にました。

これキヨミズ=ステージから Jump They Sayちう感じで買った高額商品なので、今なら1万円台で新しいの買えるよーゆうてもショックは大きい *2

そんで間の悪いことに今ちょうど Acronis True Image 2016 によるノンストップバックアップが障害起こしてサポートにゴルァしてる最中。 過去データが2015→2016へのアップグレードで壊れてて復元もできずデータ救出できない状態のまま、こっちをテスターかなんかと勘違いしてるんじゃないかというサポートに血管切れそうなんですな。

まぁ重要データはデータドライブの HDD 1TB に置いてあるしそのコピーも NAS にあるので困ってないのですが、あまりあっちこっちに複製おいとけない SSH 鍵と PGP 鍵そして SSL クライアント証明書と ピンポイントに痛いデータが復旧できない状態に、ああやっぱ USB トークンにしたい…

とはいえ SSH と PGP はもう某方面で使うこともないので新しく作って入れ替えればいいし、SSL クライアント証明書は期限は4月に切れるしまぁこっちも再起不能レベルではないか。

失って本当に痛かったのは、オウカス倒せないままの プニキのホームランダービーとか、まだ全実績クリアしてなかった(96%) クッキーババアとかですかね…また一から育て直しか…

@ 後始末

ちゅうことで全バラししてファン交換しました、つーか外装の方もパーツは去年から確保してあったのでこっちも全部交換。

バラす際の注意点としては、ワイの購入した X220 はすでに後継の X230 が発売されていて生産終了直前ギリギリのものだった関係なんですかね、キーボードベゼル や冷却ファンのネジ止め位置が X220 ハードウェア保守マニュアルとは違ってて、 X230 の方を参照する必要がありました、改良がマニュアルに反映されてないのか、足りなくなって部品流用なのかどっちか知らんけど。

あと液晶トップパネル交換する場合、裏側に無線LANのアンテナがアルミテープでべったりと貼りつけられてます。 剥がして貼り直しはちょっと難しいので、電波法的に許されざる行為な気がしますが 水回り補修用のアルミテープをカットして貼るとかですかね、もしあなたがアメリカ人ならいちいちトップパネルを交換せず割れたところに ダクトテープでも貼って終わりなんでしょうが。

私は法的にややこしいことにならんよう新品アンテナケーブルを Lenovo から購入したのですが、これだけで送料入れると 6〜7k くらいかかるのよね。 なのでトップパネルが割れたら首上全体を中古部品で購入した方が安上がりかと思われ。

@ Windows 7の再セットアップ

mSTATA SSD は現在では 256G でも1万円代とお安く買えますがその金も惜しい上に、そもそも Windows 7 のシステムドライブ用途なら手元に余ってた 128G もありゃ十分なんでそれ使うことに。

まだ当時クソ高かった 256G 買ったのは、X220 って最大容量が500Gまでしかない 7mm 厚の HDD しか刺さらないかったからなのよね。 前使ってた X201(こっちは9.5mm) には 750G が刺ささってすでにアップアップだったのに、新しいマシン買って容量減じゃ困るちゅーことで奮発したんですよな。

今は7mmでも1TBモデルあるしすでに換装済なので問題ない、あーでも誰かがワイに mSATA SSD 1TBを買ってくれるというなら止める理由はないです、なお何も見返りはありませんそんな金があったらもっと有意義なことに使いましょう。

私の物乞いリストは こちらです、年末ジャンボ10億当たったとか庭から石油が噴出して困るとか節税で金をバラまく必要がある方はどうぞ。

@ Windows Updateがまともに動かないじゃん!なんで!?

システムドライブのバックアップがさっきも書いたようにあぼーん状態なので、初期工場出荷状態からやり直しですよ。

ほぼ丸裸状態の Windows 7 に Windows Update で数百個にわたるパッチを適用していくわけですが、依存関係とかグチャグチャで

  • IE9の累積パッチ
  • IE11へのアップグレード

を同時に適用しようとしてどっちかが失敗します。

どーせ1/12以降は Windows 7 では IE11 以外のサポートが終了するのでIE9を使う理由もないので

  • IE9の累積パッチ → チェック外す
  • IE11へのアップグレード → チェックつけたまま

でWindows Updateを実行すると、なんと再起動後に Windows Update が何やってもエラー 80244019 で動かんようになりますねこれ、惨い。

エラー80245019でググると 原因はウィルス感染みたいな記事が引っかかりますが、ぜんぜんこれ原因違いますねつーかそもそもVista向けやん。

クソの役にも立たないことで定評のある answers.microsoft.com でもこのエラー絡みの 質問が上がってるんですが、このクソ記事引用されて解決しないまま終わり、モデレータ無能。

@ 原因調査と対処法(暫定)

この状態になると

  • IE11 をアンインストールして IE9 に戻してもダメ
  • IE9 もアンインストールして IE8 まで巻き戻せば動くようになる
  • ただし IE8 にしても追加でインストールを要求される KB3042058 を適用するとエラー 80244019が再発
  • KB3042058をアンインストールすれば IE11 にアップグレードしても Windows Update は正常に動作する
  • この状態で IE11 の累積パッチと KB3042058 を同時に適用すれば Windows Update は正常に動作する

つーかんじで依存関係の泥沼がある感じすね、暗号関係の fix である KB3042058が問題な気もしますが、最初に IE11 にアップデートしてエラー 80244019 地獄にハマる時点ではこのパッチは未適用なわけで、わけがわからないよ。

ということでこういうトラブル避けるために

  • IE9の累積パッチ → チェックつけたまま
  • IE11へのアップグレード → チェック外す

ちゅーかんじでIE9 への累積パッチ適用を優先して実行し、IE11へのアップグレードは他のパッチ適用が終わった後にやるべし。

ほんとに無駄な時間を使いましたわ、他にも単独で適用しないと他のパッチと競合するのか失敗を繰り返すパッチがいくつかあるけど、Windows Updateそのものが動かなくなるような惨事になるのはほんと参る。

*1:交換作業してる間の代替機にモスボールしてあったX201を押入れから引っ張り出したら、こっちもシステムボードが死んでて電源入らなくて先にこっち修理しなければならなかったのも敗因。
*2:つか最近立て続けに2.5inch 1TB HDDに、3.5inch 3TB HDDとストレージが故障してて、相変わらずどっかで五寸釘打たれてる藁人形の効果が有効な事が証明されている、そろそろ呪い返ししないとならん…

2016/1/17(Sun)

[音楽] そして星は再び蘇る (その1)

突然のデヴィッド・ボウイの訃報から一週間経って少し世間の狂騒も治まってきたので、遺作となったアルバム ★(Blackstar)のプロモーション映像などを観て自分なりに感じたものを何回かに渡って書きます。

@ 黒き星 (Blackstar)

アルバムタイトル曲、Blackstarのプロモーション映像です。

黒い太陽が妖しく輝く、どこかの惑星に漂着した宇宙飛行士の亡骸のアップからはじまります。

ダクトテープによる数々の修理痕も痛々しいボロボロの宇宙服は、胸の スマイリーフェイス*1から1960年代からやってきた人物であることが見てとれます、一体これは誰なのか?

@ 宇宙で起きた奇異なる出来事 (Space Oddity)

この宇宙飛行士は、彼の初期のヒット曲 Space Oddityに登場するキャラクターであるトム大佐(Major Tom)と思われます。

地上管制からトム大佐へ (10, 9, 8, 7, 6)
カウントダウンを続行する、エンジン点火 (5, 4, 3)
燃調チェック、神のご加護が君と共にあらんことを (2, 1, 打ち上げ開始)

彼はカウントダウンの後、空気を轟音で震わせながら蒼穹を切り裂き漆黒の闇が広がる宇宙へと飛び立ちます。

打ち上げ成功で彼は一躍ヒーローとなり、人々は彼のありとあらゆる些細な情報ですらも興味を持たれる存在となります。

こちら地上管制、トム大佐へ
本当におめでとう、合格点を差し上げるよ
地上じゃ新聞記者たちが、君の着てるシャツはどこ製?みたいな事まで知りたがっているよ

トム大佐はこの後に宇宙遊泳ミッションを行います。

(地上管制)さあカプセルを離れる時間だ、君が怖気づいてなければだけど

こちらトム大佐、地上管制へ
ちょうどハッチから這い出すところだ
いまだかつてない変な姿勢で宙に浮かんでる

そして今日は星々が普段とは全く違ったものに見える
ブリキ缶みたいな宇宙船に腰かけて
頭上をみれば自分以外の全人類の住む世界が浮かんでいるんだ
地球は青く
そして僕の手の届かないところにある

しかしこのミッションの最中にトム大佐は何らかのトラブルに遭遇し、通信が途絶えます。

地上管制からトム大佐へ
君の回線が死んでるのか? 何か異常があるようだ
聴こえるか? トム大佐
応答願う、トム大佐
返事をしてくれ、トム大佐

いつも挑発にも近い軽口の地上管制、うってかわって悲痛な声でトム大佐に呼びかけますが返事はありません。

歌詞には原因について言及はないのですが、トム大佐は死にその亡骸は永遠に深宇宙を彷徨う事になったと広く解釈されています。

@ 次回予告

いったいトム大佐の身に何が起きたのか?これを理解するには今から半世紀ほど時代を遡る必要があります。

次回「 月旅行時代という白昼夢 (Moonage Daydream)

*1:ヘルメットの内側にもマークがありフォーカスが当てられるのですが、何か判る方いらっしゃいましたら情報希望。

2016/1/18(Mon)

[音楽] そして星は再び蘇る (その2)

昨日の続きです。

@ 月旅行時代という白昼夢 (Moonage Daydream)

タイトルは1972年、もう月面からのテレビ中継も新鮮味がなく飽きられた頃にリリースされたアルバム The Rise And Fall Of Ziggy Stardust And The Spiders From Marsからです。

この曲は The Spiders From Marsの前身の Arnold Cornsによって録音されたバージョンがあり、アルバムのコンセプトが固まっていなかったのか歌詞が一部異なります。しかしサビはどちらのバージョンも

痺れるような君の視線で僕をずっと見ていて欲しい
光線銃を僕の頭に突きつけて
君の美しい顔を僕に押しつけてキスしてくれないか、愛しい人よ
気狂ってしまおう、月旅行時代という白昼夢の中で

月面に人類が大いなる一歩を記した宇宙開拓時代の狂騒と LSDによる幻覚の真っただ中で愛し合う男女 *1の事を歌っています。

しかし同年12月に打ち上げられた17号を最後にアポロ計画は打ち切られ、月は再び人類の立ち入らぬ地となりました。 そしてLSDもイギリスでは前年に制定された 薬物乱用法により衰退していくこととなります。

まるでどちらも白昼夢であったかのように、果たしてこれらの狂乱の時代は何だったのでしょうか?

@ 容易ならざること (It Ain't Easy)

それは余りにも不可能と思える挑戦でした、タイトルはやはりアルバム Ziggy〜 から。

容易ならざること
容易ならざること
そんな簡単な事じゃない、落ち込んでいるようじゃ天国へはたどり着けない

今を遡ることおよそ半世紀ほどの昔、ライス大学において ジョン・F・ケネディ大統領は有名な演説を行いました、1962年の事です。

アメリカは月に行くことを選択します
アメリカは月に行くため、これからの10年であらゆることを実現するという決断をします
それは決して容易だからではなく、何よりも困難であるからです

しかしこの時アメリカの持つロケット技術は ヴァンガードレッドストーン、そして ジュノーIIといった「運が良ければ飛び大抵は爆発する」という信頼性の著しく劣悪なロケットが全てでした。

なぜこのような無謀とも思える政策、しかも10年のタイムラインを切ってまで強硬したのでしょうか?

@ 風が吹くとき (When The Wind Blows)

タイトルは核戦争の後に訪れる「核の冬」を題材にした、映画 When the Wind Blowsの同名主題歌より。

さらば息子よ、恐ろしい闇がやってくる
もう二度と太陽の光を見ることはないだろう
僕はその時のことを考えるのがとても恐ろしい
あの風が吹く時の事を
あの爆風が全てを吹き飛ばす時の事を

1957年にソ連は史上初の人工衛星である スプートニク1号の打ち上げに成功し、アメリカは スプートニク・ショックと後に呼ばれるパニック状態となります。

ロケット技術の優位性すなわち大陸間弾道ミサイルの優位性です、スプートニク1号を打ち上げた R-7ロケットに水爆を搭載しすることで、ソ連はいつでもアメリカを奇襲核攻撃できると信じられるようになったわけです *2

その危機感( ミサイル・ギャップ)から、これまで陸海空軍がバラバラで進めていた宇宙開発を新たに設立した NASAの元に一元化し、ソ連に先駆けて有人宇宙飛行を実現すべく マーキュリー・セブンと呼ばれることになる7人の宇宙飛行士を選出します。

しかし演説の前年、ソ連はまたもや ボストーク1号により史上初の有人宇宙飛行を成功させ、アメリカとの宇宙開発競争に勝利します。

何度となくソ連に後塵を拝したアメリカが狙う逆転の一打が、月への一番乗りを果たすということです。 その意思表明がこのケネディ大統領による「アメリカ人を世界に先駆けて月に立たせる」という演説だったのです。

@ 次回予告

月へのレース、いよいよトム大佐のモデルとなった宇宙飛行士たちの話になります。

次回「 英雄に求められる資質 (The Right Stuff)

*1:The Spiders From Marsバージョンでは男同士ともとれる歌詞ですが、Arnold Cornsバージョンでは男女です。
*2:実際にR-7ロケットにはアメリカ本土を核攻撃できるほどの能力はなく、ヨーロッパに中距離弾道ミサイルと戦略爆撃機を配備する西側が未だ有利でしたが、アメリカはその事実を知る由もありません。

2016/1/20(Wed)

[音楽] そして星は再び蘇る (その3)

ボウイが曲 All The Young Dudeを提供した モット・ザ・フープルのドラム、デイル・"バフィン"・グリフィンも、まるでボウイに呼ばれるかのように 亡くなられたようです。

ボウイと ミック・ロンソンが天国でスパイダーズ再結成するのに、ずっと若年性認知症に苦しんでいた彼を選んだのでしょう。 なんせオリジナルメンバーの ウッディはまだ元気に ヴィスコンティと現世で仕事やってるのでドラムの座がぽっかり空いてましたからね。

ということで 昨日の続きです。

@ 英雄に求められる資質 (The Right Stuff)

タイトルはアメリカ初の有人宇宙飛行を目指すために選ばれた7人(マーキュリー・セブン)を描いた映画「ライトスタッフ」より。

砂漠のど真ん中の基地でいつ墜落するかも知れぬテストパイロットを生業とし、明日の朝生きてるかどうかも判らなかった男たち。 その代償は雀の涙のような軍の俸給以外は「自分は最高のパイロット」だという自尊心だけです。

悪運が尽きてしまえば、後に残るのは葬儀で涙を堪える未亡人とおきまりの追悼飛行、そして行きつけの食堂 *1に写真が飾られ、僅かな人々が故人の勇敢さを時折思い出すのみだったのです。

しかし彼らがアメリカ人として初めて宇宙を目指す7人、 マーキュリー・セブンに選ばれたことで生活は一変します。 世界で最も有名な写真週刊誌だった ライフの表紙を夫婦と共に飾り、独占インタビュー契約で年50万ドルを得るようになります。

彼らはメディアによって「国家の存亡を賭けたレースに出場する勇猛果敢な挑戦者たち」として大々的に取り上げられ、一躍国民的ヒーローとなります。 まるで Space Oddity の歌詞で

地上じゃ新聞記者たちが、君の着てるシャツはどこ製?みたいな事まで知りたがっているよ

と歌われたように、その一挙手一投足が新聞やテレビで報じられる立場となったのです。

しかしこれはとても奇妙な話です、彼らはまだ一度たりも月どころか宇宙にも飛び立っていませんし、乗り込むべきロケットもありません。 何の結果をも出していない男たちを、なぜ人々は英雄として迎え入れたのでしょうか?

@ 名声 (Fame)

タイトルはボウイとジョン・レノンの共作によるあまりにも有名な曲。

名声、代償としていろんなものがくっついてくる
名声、もうあいつを解放してやってくれ、受け入れきれるわけがない
名声、その立場にたったところで集まってくるのは中身が空っぽのものばかり

映画ライトスタッフの一シーンより。

(ジョン・グレン)
俺はこの計画の先行きを暗くするような厄介ごとは何一つ持ち込みたくない
人生で最高のチャンスを手にしたんだ、その前で立ち止まるような真似は勘弁だ
他の奴らにクソを擦り付けられたくない

判ってるよな?お前らのやってることは必ず問題になるぞ

(スコット・カーペンター)
なんの話だよ?

(ジョン・グレン)
お前らが夜な夜な遊び歩いてる事の話をしてるんだ、若い女の話だよ、ふわっふわしたグルーピーどもの話だよ
ズボンのチャックはきつく締めて、そのだらしないイチモツはしまっとけって言ってんだよ

(アラン・シェパード)
グレン君よぉ、あんた超えちゃいけない線踏んだぜ、あんたのモラルってやつを他人に押し売りしないでもらおうか
俺らは皆志願してこの仕事について、長時間の訓練に身を捧げてる
その上任務に対して発生する義務の範囲を超えた仕事にまでつきあわされてる、工場の親善訪問みたいな慈善にまでだ

(ジョン・グレン)
それが女連れ込んでお楽しみする理由なのか

(アラン・シェパード)
この忙しさでまともな家庭生活なんてどっかいっちまったよ
グレン君な、良識をわきまえるってことは、他人のイチモツの使い道についてはとやかくいわないってことだぜ

(スコット・カーペンター)
ジョンの言う通りかな、好むと好まざるとに関わらず俺たちはもう有名人なんだ、俺たちにそれだけの価値があろうが無かろうが
人は俺たちを尊敬と羨望の目で見るんだ、とんでもない責任を背負わされたもんだ

(アラン・シェパード)
普段パイロットが空飛んでない間どうすべきかなんて、お前こそお説教できるご身分なのかよ

(ガス・グリソム)
ちょっと待てよ、お前ら何から何まで間違ってる、俺たちの問題はメスマンコなんてどうだっていいんだ
俺たちの問題はサルだよ

(ジョン・グレン)
何言ってんだコイツ

(ガス・グリソム)
俺たち自身の問題だよ、俺たちはサルなんだよ

(デューク・スレイトン)
あー、ガスが言わんとしてるのはもっと別に話すべき問題があるだろってことだろ
噂はみんな聞いてると思うけど上層部は予行で宇宙にサルを送り込むつもり、サルに宇宙船の操縦は無理だろ?つまりおサルの電車を作る気なんだ
そして俺らは本番でも運転席にただ座ってるだけ、俺たちはパイロットどころか大学を出たチンパンジー扱いってことだよ

(ガス・グリソム)
クソが、ナメやがって

Fameの歌詞通り、名声は多くの良くない副作用をもたらしました。彼ら7人はこれまでどおりの生活を送ることはもはや不可能です *2

彼らは軍人です、自分らがアメリカ国民から英雄扱いされる理由を Call Of Duty、つまり国家の大事に自らを捧げ、人々が模範とすべき規範を行動せしめ、さらに任務を完璧に果たすための能力を自分が持っているからと固く信じています。

しかしながら上層部が宇宙飛行士に求めた能力つまり彼らがクリアしてきた適性テストというのは、肺活量などの基礎体力測定はまだいいとして

  • 徐々に傾斜と速度が厳しくなるランニングマシンを踏破する
  • 長時間氷水に足を漬けてガタガタ震えながら耐える
  • ひまし油を飲む(そして下痢をする)
  • 大量の浣腸液を尻に注入されてひたすら我慢する

というあまりにもバカバカしい無意味なテストの数々でした *3、実際に腹を立てて選考を途中辞退したパイロットもいます。

彼ら7人は陸海空軍そして海兵隊のエリートではありましたが、テストパイロットとして技量の高い人間は他にもいます。 例えばこの映画のもう一人の主人公、はじめて音速の壁を突破した男 チャック・イェーガーもです。

連日のように新聞や週刊誌そしてテレビを賑わせる「まだ何も成していない」英雄たち。 そもそも彼らが選ばれた理由が「大量の浣腸を尻に注入されても長時間排便を我慢できる能力に優れる」からだったと国民が知ったら?

この頃テレビで人気だったコメディアンの ビル・ダナが演ずる、英語も片言のメキシコからの不法移民である ホセ・ヒメネスの方がよっぽど宇宙飛行士に適任ということになってしまいます。

そもそも上層部は当初テストパイロット達から宇宙飛行士を選ぶ予定すらなかったのです。 実験動物として、よりによってテストパイロットのようなプライドが高く扱いづらい人種はまっぴら御免という判断でした。

(上層部)
スペシメン(実験動物)を打ち上げます

(大統領)
スペースメン(宇宙人)を?

(上層部)
ス-ペ-シ-メ-ン、実験動物をです。

(大統領)
その、いったいどういう実験動物だね?

(上層部)
タフで、地上からの指示をよく守るものをです
そう、私が考えてるのはジンプとか

(大統領)
ジンプ?何なんだそりゃ一体

(上層部)
ジンプ、チンパンジー、つまりサルです。

(補佐官)
宇宙へ行くアメリカ人の最初の一人がサルだって?

彼らは空中ブランコ、綱渡り、水中脱出そして人間大砲に長けたサーカスの曲芸師や奇術師こそが適任とすら考えていた時期すらあったのです。そう ジョルジュ・メリエスの映画 月世界旅行の登場人物さながらに。

彼らはテストパイロットとして死ねば、誰よりも勇敢に操縦桿を操作した男として死ぬことができます。 しかし操縦桿もない全自動運転のカプセルにただ座ったまま実験用のサルとして死んでしまったら?

@ 次回予告

宇宙飛行士はただの実験動物のサルなのか、それとも名声に値するだけの能力を持った男たちなのか。

次回「2001年宇宙の旅 (2001: A Space Odyssey)」です。

*1:元は女性パイロットの草分け的存在で「エドワーズ空軍基地の母」と呼ばれた "パンチョ"・バーンズが経営する ハッピーボトム乗馬クラブの事、彼女と店の ドキュメンタリー映画もあります。
*2:そして月旅行時代の狂騒が終わる頃には宇宙飛行士とその妻たちのほとんどが離婚を経験し、あるものはアルコールに溺れ心を病み、そして命を絶った者までいます。
*3:映画では虚実ない交ぜの出鱈目なテストのオンパレードで爆笑モノです。

2016/1/26(Tue)

[音楽] デヴィッド・ボウイの 'Heroes' をトラック毎に分析する

Breaking down David Bowie's 'Heroes' - Track-by-trackより。

デヴィッド・ボウイの名曲 'Heroes' を長年プロデューサーを務めたトニー・ヴィスコンティが直々に、どのように録音したのか マルチトラックを操作しながら解説した動画が上がってますな。

聴き取り辛い(自分的に)部分もあったので不完全ですが、翻訳したのを何回かに分けて上げてみる。 アメリカ人にしては私でもある程度聴きとれる英語なのはイギリス人との仕事が多かったからですかねぇ。

@ マスターテープについて

私の手元に 'Heroes' のマスターテープがやってきた時、それはハイエンドデジタルに変換済み(*1)でした。
というのもテープは古く(聴き取れない)で磁性体は摩耗し、それ以上再生し続けることは無理だったからです。
テープはデジタルに変換されましたが、それはとても素晴らしい(聴き取れない)で音はとてもよく聞こえました。
私の耳には(オリジナルの)テープと遜色ありませんでしたね。

(*1) ヴィスコンティは 'Heroes' 収録の同名アルバムのプロデューサーですので、当然アナログマスターは手元にないとおかしな話です。
     わざわざ「手元にきた」とってるのは、CD化の時のデジタルリマスターには関わらなかったこと指すのでしょう。
     ここでの「ハイエンドデジタル」が
      - Rykodisc 時代の 1990 年リマスター(20bit)
      - EMI 時代の 1999〜2003 年リマスター(24bit)
     どちらを指すかは不明ですが、ヴィスコンティとボウイがアルバム"Heathen"で再び組むのが2003年ですから
     後者と考えるのが自然ですかね。

@ 5人によるセッションからはじまった

どの曲もなんですが、この'Heroes'も伴奏から(録音を)開始しました。
この頃、デヴィッド(・ボウイ)は最高のバンドと作業していました。

 - ベースのジョージ・マーレイ
 - ギターのカルロス・アロマー、彼とは"Young American"からはじまって30年(*2)のつきあいになります
 - そしてドラムのデニス・デイビス

この(録音の)時点でデヴィッドは彼らとはミュージシャンとして数年のつきあいで、ツアー(*3)に出ることにもなります。
それでは、ベーシックトラックを聴いてみましょう。

 - デニス・デイビスはドラムに座り
 - カルロスはギター持って部屋(*4)に
 - ジョージマーレイはベース
 - そしてピアノ(*5)を弾くのはデヴィッド・ボウイ
 - またスタジオの隅にブライアンイーノ、彼(イーノ)はブリーフケースシンセサイザー(*6)を演奏し美しく雄大なノイズ音を出します

曲はこの5人のミュージシャンたちのセッションで録音ははじまりました。
歌はありません、まだメロディもありませんでした、曲の形も構造もまだありません。
この曲を何て呼ぶかもまだ誰も判りませんでした、これがこの曲の始まりです。

(*2) この時点で30年では当然ありません(まだボウイ30歳にカルロス26歳ですし生まれてからずーっとになってしまいます)
     Young Americans(1975) 〜 Reality(2003) までおよそ30年という事です。

(*3) おそらく1978年からの Low & Heroes ツアーのことを指していると思われます
       https://en.wikipedia.org/wiki/Isolar_II_%E2%80%93_The_1978_World_Tour
     ちなみに Station To Station ツアーにもこの3人は参加しています。
       https://en.wikipedia.org/wiki/Isolar_%E2%80%93_1976_Tour

(*4) スタジオの中の防音室の事と思われます。
     各パートごとに演奏して録音を重ねるのではなく、全員で一発録りする場合には楽器の音が被らないよう
     パーテーションや防音室などを使います。普通はドラムが防音室に入ることが多いのですが(他の人はヘッドホンで
     ドラムの音を聴きながら演奏する)ここではギタリストがが防音室に入ってるという事は、フィードバック対策などの
     特別な理由があったかと推察されますが、それにしてはドラムトラックにもギターの音がかすかに被ってる事を
     わざわざ解説してるのでしてるので、防音室ではなくスタジオ全体を指してるだけかもしれません。

(*5) ピアノといってますが鍵盤程度の意味で、実際に弾いてるのはシンセサイザーでしょう。
     後のインタビューでその機材も出てきますので、次回説明します。

(*6) EMS Synthi AKSのこと、イーノはロキシー時代からアンビエント時代に至るまでEMS社のシンセを愛用しています。
       https://en.wikipedia.org/wiki/EMS_Synthi_AKS

@ サウンド解説(その1) - 後から音を変える必要なんてない

では早速ですがドラムトラックからはじめましょう、(OKアラン、再生よろしく)

 - はい、キックドラムです
 - スネアドラムです、後ろにカルロスのギターの音がちょっと聴こえてますね
 - そして頭上に立てられたシンバル用のマイク
 - またタムタムのトラックもあります
 - ドラムと一緒に(*7)
 - そしてジョージ・マーレイのベースも

彼(ジョージ・マーレイ)は特殊なエフェクターをベースにかけてます、フランジャーです(*8)。
ちょっと2番で止めて、ここに型破りなアプローチを見ることができます。
というのも普通のミュージシャンでなら
「テープには生音でエフェクト音を録らないで、だって後からエフェクトをオフにできないから」
というところです。

でもこれは(聴き取れない)意図してやってます、私たちはエフェクト音も一緒に録音します。
後から取り除けませんが、なぜ後から変える必要があるのでしょう。
ヴァイブ(揺らぎ、雰囲気)を作り出すその小さなモノ(*9), ヴァイブを作ったのだし変更できても無意味ですから。

この音が(聴き取れず)

この音です、私たちはこの(ベーシックトラックの)上に'Heroes'を組み上げていったのです。

(*7) おそらくカルロスのギターだけソロで流したシーンが一部カットされたのでしょう

(*8) 音をジュワーとジェット音のように変える強力なエフェクターです、原理はこのへん参考にしてください。
       http://www.hikari-ongaku.com/study/effc_etc.html
     位相系のエフェクターをベースに使用すると音が細くなりがちなのでであまり普通は使いませんが
     80年代に入るとベースをメロディ楽器的に使うバンドがフェイザーなんかをかけるケース増えてきます。

(*9) コンパクトエフェクターの形状から「小さなモノ」といってると思われます
     フランジャーは元々テープを使って実現するもので、機材もオープンリールを使ったりで
     コンパクトとは程遠かったのですが、70年代の頃には半導体や集積回路の発達の恩恵により
     小さなペダル型にまでダウンサイジングされていました。
     時期的には発売間もないElectro Harmonics社のMistressあるいはMXR社のM-117Rあたりでしょうかね。
     新しいオモチャがきたというスタジオの雰囲気が感じられます。
       http://www.kcmusic.jp/ehx/deluxe-electric-mistress.html
       http://www.jimdunlop.com/product/m117r-flanger

次回はブライアン・イーノとロバート・フリップの作業について。